Papen's Piling

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『メトロイドプライム4』と"レトロスタジオ"

 『メトロイドプライム4』(予定)がレトロスタジオ主導に変わったことはご存知かと思います。では、そこに関われそうな社員は何名いるか見ていきます。

VGCが2019年8月に出した記事の更新版みたいなものです。
www.videogameschronicle.com

『メトプラ3』継続だと23名

先にお伝えしますと、VGCの内容は正確かと思います。『メトロイドプライム 3 コラプション』開発で今も残っていると思われる社員は23名です。
(VGCの集計から、MobyGamesで2014年以降他のゲーム制作に携わった人を外しました)

名前 メトプラ3 メトプラ2 メトプラ1
Michael Kelbaugh Executive Producer Senior Producer ×
Ryan Harris Assistant Producer Assistant Producer ×
Jay Fuller Design × ×
Russell O'Henly Design Design Support ×
Brandon Paul Salinas Design × ×
Bill Vandervoort Design × ×
Jonathan Delange Contract Design × ×
Chuck Crist Senior Art Senior Art Art
Ryan Powell Senior Art Art Art
Sean Horton Art Art ×
Matt Manchester Art × ×
Teague Schultz Art Art ×
Thomas Robins Contract Art × ×
Ryan Cornelius Engineering × ×
Jim Gage Engineering Engineering Engineering
Andy Hanson Engineering × ×
Alexander Quinones Engineering Engineering Engineering
Jesse Spears Engineering × ×
Aaron Walker Engineering × ×
Vince Joly Animation Lead Animation support ×
Dax Pallotta Senior Animation Animation Animation
Stephen Zafros Animation Animation Animation
Raphael Perkins Contract Animation × ×

『トロピカルフリーズ』との関わりとそれ以降

まぁそれだけならVGCさんの記事の後追いです。そして、この辺では大したものも得られないだろうと考え、ドンキーコングシリーズにおけるレトロスタジオの関わりも見ていきます。

レトロスタジオは『ドンキーコング トロピカルフリーズ』(2014)が最新作です。ここも見ていくと、8年前のレトロスタジオの状況が分かります。MobyGamesの所を見ると"204 people (189 developers, 15 thanks)"とあります。しかし、実際にレトロスタジオ社員と見なされているのは99名です。『ドンキーコング トロピカルフリーズ』以降、別のタイトル制作に行かれた方もおります。そこで現在もレトロスタジオに在籍していそうな方で絞ると66名となります。この規模でAAAクラスのゲームを作るというのは、少々…いえそもそも無理でしょう。
www.mobygames.com

参考ではありますが、シングルプレイオンリーの『Cyberpunk2077』は"3532 people (3156 developers, 376 thanks)"です。この作品は音楽で協力者が多いので公平ではないですが。もう少し現実的なものですと『DOOM Eternal』でしょうか。こちらも"1379 people (1302 developers, 77 thanks)"と大所帯ですが(メトロイドプライム4をシングル主体のファーストパーソンアドベンチャーだと仮定してますが、該当するタイトルが見つからなくて大変です)。

どちらにせよ、2002年以降任天堂の子会社でありますレトロスタジオが相当の人材を募集していることはt011.org様の記事でも分かります。

経験者を見る意味とは

 ここで言えるのは、「海外のゲーム制作会社において前シリーズ経験者、長い在籍者のみを見ることに、どういった意味が得られるか」ということです。AAAクラスの作品を作るという話で全体で66名しかいないレトロスタジオだけではどうにもなりません。その辺は親会社の任天堂の力が肝心でしょう。で、下からは妄想です。

当初、「レトロではない “才能ある新たな開発チーム” が『メトロイドプライム4』を担当」から始まったこのプロジェクトですが、その陣容から、あるいは出せるアイデアが無かったことから任天堂の方でそのようなチームを生み出していこうとしたのかも知れません。しかし、それでは上手くいかず、レトロスタジオが新たに開発を担当するようになった。

そんなストーリーが考えられます。『トロピカルフリーズ』から8年、『メトロイドプライム3 コラプション』から11年という歳月が経っていますが、その間レトロスタジオに居続けた方が何かを生み出せた。というのはおかしな話ではないと思います。

確かに海外のゲーム業界はキャリア採用といいますか、そもそも日本のような新卒採用がありません。外部労働市場が機能しており、魅力のあるプロジェクトがあればそちらに移籍していくのが常道です。ですが、誰も彼もが移籍する訳ではありません。それは日本のゲーム業界も同じでしょう。まだまだ内部労働市場が機能していても、転職をする方もおります。主な法則に当てはまらない、例外的存在を見ることは難しいですが、そこに何かから得られるかも知れません。

レトロスタジオを任天堂はどう見ているのか

ただ、それはそれとして任天堂は一体何故レトロスタジオではないチームにメトロイドプライム4を最初任せようとしたのでしょうか。2002年以降子会社であり続け、主要タイトルがメトロイドプライムシリーズであったのにも関わらず、何故そのナンバリング最新作から外したのか。

考えてみれば見るほど不可解です。同じ子会社であるモノリスソフトをゼノブレイド最新作の開発から外すようなものです。「モノリスソフトは順調だから」というような反論はすぐできます。ですが、レトロスタジオが順調でないならそれは親会社である任天堂がしっかり監督した方がいいでしょう。明確な資本関係を持たないハル研究所の星のカービィシリーズを見るのとは訳が違います。

この辺に明確な根拠はありません。子会社化したモノリスソフトがある程度形になったことを受け、元々あったレトロスタジオにもそれができるのではないか、そう考えたのかも知れません。東京とテキサスのゲーム制作会社で文化は違いますが、結果をつかんだ現在の任天堂は何かを編み出したのかも知れません。

それは第三者には全く見当が付きませんが。