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【翻訳】2014年のGVCによる熊崎と服部へのインタビュー記事

 2014年の4月29日にGVCは以下のインタビュー記事を投稿していました。翻訳している所が無かったため、やることにしました。

Kirby Triple Deluxe devs discuss the 3DS game, HAL's relationship with Nintendo - Nintendo Everything

 この記事ではハル研究所の熊崎 信也任天堂の服部 由里絵が対談相手となっています。服部氏はカービィシリーズにおいては

  • 『星のカービィWii』 - マネージングディレクター
  • 『星のカービィ トリプルデラックス』 - マネージングディレクター
  • 『カービィファイターズZ』 - マネージングディレクター
  • 『デデデ大王のデデデでデンZ』 - マネージングディレクター
  • 『星のカービィ ロボボプラネット』 - スペシャルサンクス

以上の作品に関わっています。社長が訊く『星のカービィ Wii』でも登場していますので興味がある方・まだ読んだことが無い方はそちらもご覧下さい。

www.nintendo.co.jp

手前と奥の2つの面が生まれた訳

何故、開発チームは3Dを使用する最良の方法として、手前と奥という2つの面を使用すると決めたのでしょうか?

 

熊崎 信也(以下、熊崎):『星のカービィ トリプルデラックスがニンテンドー3DSにおける最初のカービィタイトルであることを踏まえると、私達は開発の始めに「どうやってこのハードにカービィを持ち込めるのか?持ち込めるなら3DSの機能で、カービィをユニークなタイトルにするにはどうすればいいのか?」と考えました。

そこで私達は、ニンテンドー3DSの最大かつ最もユニークな機能に着目しました。お馴染みの立体視機能です。そのため、立体視機能の追加と伝統的な横スクロールのアクションでそれを結びつける術を探り、顧客に通用するようにしました。

その術が、質問で言及されました通りの手前と奥の2つの面を持つことです。クラシックな横スクロールアクションの『TDXにおいて2つの面を追加することで古典的なプレイスタイルを維持しながらも深み、独創性、独自性を加えられました。立体視機能の実装に対して不安があるかも知れない人々の手にも取りやすくできました。

 

ビッグバン能力実装の訳

ビッグバン能力を得たカービィのすいこみのパワーアップについて

 

熊崎:『星のカービィ Wii』でカービィはがんばりすいこみを授かりましたが、それは以前のカービィシリーズの作品に登場したものの延長線上にありました。例えば『星のカービィ鏡の大迷宮』に登場していました。そもそもカービィのすいこみ能力を持続的に強化する際には常にリミットが設けられていました。カービィは全てを吸い込めないのです。 

そのため、ビッグバンで最初期からのカービィの原点「なんでも吸い込む、星のカービィ」に戻り、実現させたかったのです。*1 例えば広告などでは都市や巨大なテレビスクリーンをカービィが吸い込みます。

ですが、ゲームそのものでは吸い込める物はシステムが許す物に限られていました。そこで私達は進んでそのリミットを投げ出し、今度こそカービィが何でもすいこめるように出来ました。 

額面通りに原点を受け取りましたので、カービィが自分にできることを実際に達成できるようになりました。プレイヤーが座ってゲームを始めると最上の驚きやその瞬間に立ち会うでしょう。「嘘でしょ!?カービィが何でもすいこめるなんて!」のように。 

ビッグバンはプレイヤーがスクリーンを見ているものに本当に楽しみ、満足してくれると思う手法や機能を実装することを可能にしました。

 

序盤はゆるく、後半で緊張感が増す理由

何故ハル研究所のゲームは序盤はゆるく、後半で突然緊張が増すのでしょうか?

 

熊崎:最初のプレイのしやすさとゲーム後半での緊張の急激な増加に注意を払う点は、私達が全てのカービィタイトルを制作するときに念頭に置いている哲学です。 

始まりでは広い間口がありますので、カービィはあらゆる技術レベル、年齢、興味関心のプレイヤーに手を取って貰いやすくなっています。ゲームが進行するにつれて、プレイヤーはステージを移動し、同時に段階的に難しくなり、より大きなボスと戦っていきます。操作を学び、楽しい一時を過ごしていながらも彼らは実はゲームの中で成長しているのです。そしてゲームは、彼らの増加した快適さレベルがゲームとマッチするように少しずつ成長していきます。

これは難易度や敵の種類だけでなく、ゲームの世界の雰囲気にもあります。最初のステージでは空は青く、晴れていて、鳥のささやきも聞こえるでしょう。非常に明るくて楽しいので、その世界に行きたいと思うかも知れません。しかしプレイヤーが進むにつれて物語がよりシリアスになり、雰囲気は少しずつ暗くなっていきます。灰色の空を見るようになると、物語が進んでいると感じるでしょう。

そのようにしてプレイヤーはゲームと共に成長し、変化していきます。1つの連続したゲームであったとしても最初から最後までステージ*2は変わり、その変化にプレイヤーは揉まれ*3、ゲームの進行と共に成長すると感じています。私はそれが全てのカービィタイトルで達成しようとしていることだと考えておりますし、そういった意味からニンテンドー3DSにおいてこのタイトルは大きな成果を収められたと思います。

 

サブゲームがボリューミーな理由

何故サブゲームがボリューミーなのでしょうか?

 

熊崎:私達のカービィシリーズの開発で常に守ろうとしている大きな目標の1つは、あらゆるレベルのプレイヤーにアピールするゲームを作りたいということです。その目標を達成するためにメインゲームだけでなく、サブゲームも用意します。

たとえメインゲームが、先程説明したように最初から最後まででプレイヤーと一緒に成長するものだったとしても、違った難易度と異なる操作体系を持ついくつかのサブゲームは、プレイヤーにさらに多くの経験を与えると考えられるからです。

それがサブゲームを追加する理由なのです。それに加えて、カービィは他に何をすることができるのか、他のキャラクターがメインゲームの外で何が出来るのかもっと見たいと思うプレイヤーもいると思っています。

例えば、デデデ大王のデデデでデンでは異なる操作体系を採用しています。そこでは十字キー、もしくはアナログスティックの左右とAボタンしか使っていません。新しいゲームプレイのスタイルとも言えるでしょう。また、いくつかのリズムゲーム要素もあります。

カービィファイターズ!ではメインゲームにはない、4人のマルチプレイを実装しています。私達が達成しようとしているのは、プレイヤーがメインゲームから得られない体験を加えることです。追加したい要素でもメインゲームの性質のため、余分なコンテンツに移動することもあります。

その背後にある全ての理由は、カービィを幅広い層にアピールしたいということです。だから私たちはメインゲームとこのエクストラコンテンツをもって、カービィのバラエティを豊富にさせ、『星のカービィ トリプルデラックス』も含めたカービィタイトルを多くの人々に遊ばせ、楽しませたいのです。

 

対戦ゲームにおけるコピー能力の実装

カービィファイターズを制作するに当たって、開発チームはコピー能力を違った観点から検討しましたか?

 

熊崎:はい!カービィとカービィが戦うのは初めてですから!ですので、コピー能力についての先入観を注意して見なければなりませんでした。その先入観は多く見つかりました。

今まではマップをナビゲートしクリアするためにコピー能力が用意されていました。しかし、今回は戦闘におけるコピー能力を見なければならず、対人戦でどの能力が登場するか決める必要がありました。

例えば、ストーンのようなマップナビゲーションやステージクリアにしか向かないいくつかのコピー能力は不採用にしました。「これはステージクリアには良いけど、戦闘用では無いよね」と。 

また、コピー能力間のバランスと難易度の調整は困難でした。ですがカービィファイターズのために選出した様々なコピー能力のために、カービィ自身に新たな魅力を加えました。*4

勿論彼らはカービィですが、能力が異なってくるとカービィとして少し違ってきます。また、プレイヤーが選択するコピー能力に応じてプレイスタイルにバラエティを加えるようにしました。*5

私は以上のことを行うことで、多くの人に求められるよう望むこの作品に、もう1つの深みの層を加えられたと思います。

 

服部由梨絵(以下、服部):プレイヤーやデベロッパーとして、ゲームをテストしている間、「どのコピー能力が最強の能力なのだろうか?」という質問を考えてきました。その質問に回答するため、カービィファイターズではプレイヤーに様々なコピー能力を試すチャンスを与えたと思います。

もっとも、それはどのコピー能力を操作して快適に感じるか、プレイスタイルに最も適しているかによって異なってくるでしょう。

ですがそれは私達自身に尋ねた質問であり、プレイヤーは周りに話していると思います。今回、このゲームではそれを実装でき、うまくいけばその質問に答えられ、多くの人々にアピールできたと思います。

 

任天堂とハル研究所の関係

長年にわたる任天堂とハル研究所の関係はどのように成長、変化してきましたか?

 

熊崎:長い間カービィシリーズに取り組んできましたが、私達は本当にこの財産を大切にしています。カービィは心から愛している作品なのです。ですから、カービィとは何か、カービィはどのようにしてゲームに登場するべきか、そしてカービィが何をすべきかについてのアイデアも持っています。

しかし、同時にカービィを保護しているように感じ、カービィのできることや彼自体を幾ばくか制限していることも理解しています。それが任天堂との素晴らしい共同作業の理由になります。彼らがやってきますと、ハル研究所社員を活性化させ、新しいアイデアをたくさん追加し、カービィを再定義するのに助けとなるからです。そのため私達がそのことで議論を重ねる時、任天堂は多くのエネルギーを供給しています。

自分達で作成したルールを遵守し、時には窓から投げ捨て、新しいものを考え直すことは不可欠です。そして、任天堂は私達がそれをしなければならない時に助け、直面して克服するための課題を設定します。そのやり方でカービィは成長し続けています。

長い開発史を通して、任天堂はハル研究所を信用していると私は思いますし、ハル研究所は任天堂を信用するよう成長しました。両者の関係は、共有している信用に基づいて構築されているのです。私はそれが本当に素晴らしい関係だと思っていますし、それはカービィシリーズの開発で証明されたと思います。

 

服部:ハル研究所と任天堂は共に長い間カービィに取り組んできました。ハル研究所は山梨に、任天堂は京都にありますから興味深いことです。山梨に行って京都に戻ってくるには8時間かかりますから、顔を合わせて会議をすることは殆どありません。

それにも関わらず、スムーズに動けていると私は思います。熊崎氏も申し上げましたように、そこには多くの信頼があります。私達はハル研究所が何をしているのか注視しており、彼らは細心の注意を払って物事を作り出してますし、開発のプロセスを進めている際にも顧客を本当に考えていることが分かります。 

ハル研究所の方々は高品質の仕事を考案しますので、細部に及ぶ彼らの作業は安全で、確実だと感じています。勿論、私達全員でカービィの魅力を高め続けるために、あらゆるタイトルでどうすればカービィがさらに魅力的になるのか、カービィには何ができるのかについてアイデアを投げ合う、幾多にも及ぶ会議を催しています。

信頼関係と長い共同作業の歴史を持ち合わせていますので、ハル研究所と任天堂はこれまでにかなり良い仕事を達成できたと思いますし、今後もこのプロセスを続けていきたいと思います。

私はこの関係がさらに強くなると考えていますし、続行することでカービィとシリーズ全体を成長させ続けることができると強く確信しています。

*1:原文はcatchphraseですが、敢えて「原点」と訳しました。

*2:原文は「games」ですが重複防止で「ステージ」と訳しました。

*3:原文の「is wipt up」は掃かれる、掃き出されるという意味ですがネガティヴな方向に行きすぎるため、苦労するという意味合いで「揉まれる」と訳しました。

*4:この「新たな魅力」が何を意味するのかよく分かりません。違うコピー帽子のことを差す場合、前者はゲームバランス、後者はグラフィックの対比となるので「but」で結びつきません。では、ゲームプレイの新たな魅力とは…?

*5:恐らく1人プレイのコピー能力によって、相手、味方のコピー能力が変わることを指していると思われます。