Papen's Piling

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2017年のカービィには予算と「世界観」が立ちはだかる

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 2016年最後の記事は『星のカービィ』シリーズのグッズ展開の激しさは予算だけでなく、「世界観」という面にも大きく関わってくるのではないかという考察記事です。

ニンドリ12月号に残されたコメント

 話は2016年10月に発売した『Nintendo DREAM12月号』に遡ります。この雑誌には現在の『星のカービィ』シリーズのグッズ展開に関わる方々へのインタビュー記事が載せられ、インタビューにおける露出が非常に少ないハル研究所の思惑を知るには有用で、現状通用する数少ない情報源となりました。その中に1つ、筆者が気になるコメントがありました。

藤江 基本的に、カービィのゲームシリーズで舞台となっているのはプププランドに危機がやってきたとき。プププランドの非常事態とも言えるかと思うんですが、そうじゃないときのプププランドはあきれかえるほど平和な国なんです。そこを描くのがグッズであり、カフェであり、LINEスタンプだと思うんですね。これからも、ゲームで見せることのないカービィ世界の魅力を意識しながらカービィを大きくふくらませていきたいです。

 出典:Nintendo Dream vol.272/Dec.2016 P17

  今回はそのような発言をした藤江氏、そしてこのコメント自体について調べ、記事を展開したいと思います。

ハル研究所の藤江とは何者か

 このブログで藤江氏に関する分析は細かくは行われていなかったため*1、ここで新たに解説したいと思います。

 まず、彼については入社年が判明しています。

4月に入社した新人もつい先日5ヶ月間の研修を終え、いよいよプロジェクト配属となりました。最終研修はゲーム制作&広報だったのですが、完成までにいろいろと苦労があったようです。今日から5回に渡って、新人と研修担当社員にその様子をレポートしていってもらいます。
まずは開発推進室所属で、広報を担当した藤江くんの登場です。(帯金)

出典:新人研修その1

 「藤江」という性、そして「ふじえ」という読みは今までに調べたハル研究所の社員250名以上の中では藤江 宏志という人物のみ該当します。その藤江 宏志は記事を参照すると2000年に入社しているのが分かります。つまり、2016年時点で勤続16年のベテランとなります。少なくとも現場ではリーダーとして存在することもあり得なくないでしょう。

 実際に彼が果たしたプロジェクトに目を向けてみますと以下のものが挙げられます。

  1. アニメ版『星のカービィ』で「設定協力」を担当
  2. 『星のカービィ メダルランドの魔法の塔』の監修
  3. 三英貿易より発売された『アクションカービィ』の監修
  4. 『The Sound of Kirby Cafe』でプロダクション プロデューサーを担当

グッズではスタッフリストなどが出てこないため、彼の行った事業についてはあまりはっきりと分かりません。しかしそれでも新人の時からアニメ版『星のカービィ』の「設定協力」を担当し、その後同作品を舞台にしたアミューズメント製品の監修を行い、以降のグッズ展開で名を連ねるというのはかなりのものです。分かる範囲だけでも数多くの実績を重ねた人物であることが分かります。そういったことを踏まえた上で、以降の彼のコメントの分析をご覧下さい。

ゲームの世界=グッズの世界?

 彼のコメントは大きく3つに分けられます。

  1. ゲームで描かれるのは非常事態のプププランド、あきれかえるほど平和な国の側面は今でもはっきりとある。
  2. 平和な国、プププランドを描くのがグッズの役割
  3. ゲームで描かれない世界を「意識」しながらカービィの世界をふくらませたい

 1番はゲームで度々侵略されるプププランドと、「あきれかえるほど平和な国」という設定を両立させる上では非常に合理的な説明と言えます。

 2番は端的に言えば、異常なプププランドをゲームが、正常なプププランドをグッズが描くという理論に発展しかねません。つまり、「グッズで言及されたカービィやそのほかのキャラクター達の行動や発言、感情がゲームと同期する」ということに繋がる可能性があるのです。もしそうなれば「グッズとゲームの統合が不毛な争いを発展させる」シナリオが実装される可能性が大きく出てきます。

 そこで重要となるのが3番です。ここではゲームでは描かれない世界を「意識」しながらカービィの世界を描きたいと藤江氏は発言しています。この「意識」がどの程度なのか、あくまでも「気持ち」なのか、それとも「正確な描写」なのか、あるいは描写する分野によって切り替えていくのか詳しい説明はどこにも書かれていません。書かれていないからこそ、彼のコメントに対する筆者の反応は「問題」や「安堵」ではなく「懸念」となるのです。安易に賛成や反対とは言えない理由はここにあります。

 このように一旦分離して考え、再度組み合わせてみると「あきれかえるほど平和な国」を描くという発想がグッズの役割を与え、可能性としてゲームとグッズの統合へと繋がりそうな発言であると理解できます。

25周年アカウントがキーを提示する?

 「あきれかえるほど平和な国」を描くのがグッズの役割であるならば、現在我々が注目できるものがあります。『星のカービィ25周年』公式アカウントです。

twitter.com

このアカウントはハル研究所によって管理されており、イラストや情報を積極的に発信することが明らかになっています。そして何より、説明に「カービィたちのあきれかえるほど平和な日常をお届けします」と書かれています。つまり、今後藤江氏のコメントがどう影響するかはこのアカウントを見ていくとと分かるかも知れません。その結果が天国か、地獄か、あるいは何も変わらないのかは現段階では判断できません。が、少なくとも2017年はこのアカウントが織り成すイラストや投稿を注視することが大事な一年になるでしょう。

 2017年で25周年を迎える『星のカービィ』シリーズは、プレイヤーやファンに対し予算という面でも大きな試練が待っていますが、こういったゲームとグッズの関わりによる世界観の描写の面でも大きな試練が待ち構えていることは忘れてはならないと思います。それでは早いですが、皆様よいお年を。

*1:これは彼が「ゲーム本編」には深く関わっていないためです。