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【翻訳】2015最高の3DSゲームを作った男【Kotaku】

 今回はKotakuの記者、Stephen Totiloが2015年5月5日に投稿した「The Guy Behind One Of The Year’s Best 3DS Games」の翻訳です。既に投稿から1年以上経過している記事なのにも関わらずどこも和訳していなかったため、やることになりました。

 翻訳元の記事はステファン・トティロ氏が向江 康博氏に対しEメーカーでインタビューを行ったものとなっております。ステファン氏が質問を出し、向江氏がそれに答えるという形を常に維持していますので、Q&Aのような形式と言えます。

  翻訳を見る前に以下のことを念頭に置いて下さい。

  1. 海外では2015年4月2日に『ハコボーイ』(海外では『BoxBoy!』)が発売されたため、このインタビューは『もうひとハコ』には触れていません。
  2. 一部、「キュービィの部屋」の制作者インタビューと重複している内容があります。
  3. 翻訳はだいぶ適当です。

 (翻訳者からのコメント: 以降、本文に挟まれる脚注は、原文には存在しない補足説明として使われます。なお原文ではBox Boy.で統一されていますがこちらでは『ハコボーイ』で統一させます。見出しは私が勝手に付けたものです。)

タイトル:2015年最高の3DSゲームの1つに関わる男

 "キュービィのような新しいキャラクターと共にゲームを作れるのは今までに感じた幸せよりも大きなものでした。” 向江 康博氏の言葉です。彼はカービィのゲームの制作でよく知られていますが、今回はカービィについては話しません。

 向江氏は長い間カービィを中心とするゲーム制作会社、ハル研究所に勤めていますが、彼はニンテンドー3DSで登場した新たなサイドスクロール・パズルゲーム、ハコボーイのディレクターでもありました。私はこのゲームが大好きで、これが3DSの傑作の1つだと捉えています。私は彼とEメールでインタビューを行い、作品について、そしてそれがどうやって生まれたのかを聞いてきました。

もし忙しいのであれば、こちらの箇条書きをご覧下さい。

  • 『ハコボーイ!』プロジェクトはハル研究所がカービィではないゲームを世に出すためにスタッフを呼んだ後に開始されました。しかしそれより前から向江氏はコンセプトを編み出していました。
  • 向江氏はファミコンやゲームボーイのゲームのシンプルなゲームデザインから影響を受けています。
  • 開発側はカービィをゲームの主役にすることも考えましたが、箱を出すカービィというのは奇妙だと悟ったようです。
  • 一般的にハル研究所はカービィのゲーム制作に集中していると思われていますが、多くのカービィではないプロジェクトも行われています。
  • 主人公は「キュービィ」で、ハコボーイではありません。ハコボーイは彼の種類、種族と考えて下さい。
  • キュービィの誕生日と期限は、向江氏曰く「今のところはなんとも言えません…ただその話は後日明らかにされるかも知れません」とのこと。
  • 『ハコボーイ!」のW5-4は日本のプレイヤーを悩ませたようで、彼は何故そうなったのか分かっていました。
  • 開発側はゲームのパズルを自分で把握し、達成感を与えることができるように穏やかな学習曲線を保とうとしました。
  • 『スマブラ』と『マリオカート』のどちらかに出場できるのを選ぶ必要があった場合、向江氏はハコ型のファイターを前者に入れたいとのことです。キュービィはカートを操る腕を持っていないからです。

1.『ハコボーイ』の開発過程

ステファン トティロ(以下、ステファン): ハル研究所は『カービィ』シリーズのゲームを作ることで知られています。ですから、カービィではないゲームを発売すると聞くのは驚きです。どうしてそうなったのでしょうか?もしよろしければキャラクターの起源についても何か教えて頂けないでしょうか?

向江 康博、『ハコボーイ』のディレクター(以下、向江): まず、『ハコボーイ』と出会うのを驚きと言って頂き感謝します。もし多くの人がカービィだけでなく『ハコボーイ』にも同じくらい関心を持っていただけるならば、私はとても嬉しいです!

 さて、それでは『ハコボーイ』の開発過程についてお話しさせてください。ある日、会社がカービィに依存しない、新しいキャラクターを特徴とするゲームデザインのコンセプトを世に出したいと発表しました。実はその発表より前に、私は『ハコボーイ』についてのアイデアを思いついていたので、完全な企画書としてそれを書き上げる良い機会と判断し、受諾しました。その後、デザインでポテンシャルが分かった数人のスタッフが会社内で遊べるプロトタイプのゲームを作りました。一度私たちがセットでそのデザインとプロトタイプを提示すると、『ハコボーイ』プロジェクトとして公式に認められ、開発はそこから始まりました。

 『ハコボーイ』のキャラクターについてですが、背景にあるオリジナルなアイデアは何もありません。キュービィのキャラクターは彼のハコ生成の能力の一部として機能的にデザインされました。彼は四角でできていますのでハコを生み出すことを奇妙に思う方はいないでしょう。それから、歩行とジャンプができるように足と、彼の顔がどちらを向いてるか分かるように目を加え、キュービィは完成しました。 

2.キャラクターの名前はキュービィ?ハコボーイ?

ステファン: 今から質問することは重要ではないと思います。ですが私はどうしてもはっきりさせたい。キャラクターの名前は”キュービィ"?それとも"ハコボーイ"?両方?

向江: “キュービィ"がキャラクターの名前です。"ハコボーイ”はキュービィの種類や生物としてのタイプと考えるのが良いと思います。*1

3.キュービィの誕生過程とバックストーリー

ステファン: ところで読者と共有できそうなキュービィの古いスケッチ等何かお持ちですか?彼らはキャラクターがコンセプトから最終決定までどのように発展して行ったのか見たいと思いますし。私は特に誕生日や出身などどれくらいのバックストーリーをキュービィが持っているのか知りたいです。

向江:これは企画書に含まれている最初のイラスト群です。

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出典:The Guy Behind One Of The Year's Best 3DS Games

申し訳ありませんが、あなた方が多分特別なことに期待していなかったと思いたいです。イラストを見ると分かるように、昔と今ではほとんど違いがないのです。多分これを見た人が同じだと思ったかも知れません。(そうは言っても、わずかな変化はあります。例えば、体の角度、目の大きさが該当します。)キュービィが箱を生み出すことができるという機能的な見方から設計された時から、私はこのキャラクターは初期の時点でほとんど完璧だったと感じます。

 キュービィの出身と誕生日については今の所不明です。しかしその情報は後日明らかにされるかも知れません。『ハコボーイ』はパズルを解決するだけではなく、ステージを進めることで世界の秘密の多くが徐々に明らかになるストーリーの要素もあります。プレイヤーがゲームから得られる情報を利用して何がキュービィと彼の友人を動かすかについて想像できるならば、素晴らしいことだと私は思います。

4.『ハコボーイ』とカービィの関係

ステファン: ハル研究所が主に最近カービィのゲームをリリースしていたという事実に戻ると、『ハコボーイ』は当初カービィを出演させようとしていたのかどうか気になりますが、実際はどうだったのでしょうか?

向江: キュービィ達のグラフィックを決める際のブレインストーミングで、カービィを主人公でいさせることが挙げられました。しかし、カービィのためにハコを生み出すコピー能力を生み出すのは奇妙か、不自然に見えると思案しました。そこからこのアイデアは難しいプロセスに変わり、没となりました。それから、いくつかのアイデアを考慮した後、初期からうろつかせていたキュービィの見た目が最良であると考え、それに決めました。結果は今皆様が見ているものとなります。

5.カービィと関係ない作品の開発について

ステファン: 多くのゲーマーとゲーム関係のメディア関係者は、会社があるひとつのフランチャイズ*2に取り組み続けるのを見て、その会社がフランチャイズとは関係ない作品の制作の許可さえ出してくれるのか疑問に思います。私はあなたとリードレベルデザインの神山 達哉氏が『星のカービィ トリプルデラックス』で共に働いていたと思っています。*3多分残りのチームは前にカービィのゲームに取り組んだでしょう。新しいものを作ることが出来る観点から見ると、ハル研究所は何と言えるのでしょうか? 社員は常にカービィのゲームに取り組んでいなければならないのですか? あなたはカービィではないゲームを作りたいと頼んでいましたか?

向江: あなたが言いましたように、『カービィ』シリーズはハル研究所の主たる開発製品です。が、実際には並行して進められている他のいくつかのプロジェクトがあります(当然ではありますが、私はそれらについて何の詳細も話せません)。ハル研究所にも小さなチームで動く少数の実験プロジェクトがありますし、勿論、私達が『カービィ』シリーズのプロジェクトと関係していなければならない、いかなる規則もありません。私が最初の質問で話しましたように、『ハコボーイ』はそれらの線に沿った実験プロジェクトとして始まりを得ました。

 私は『TDX』の開発に関わっていました、ですが同じ時期に『ハコボーイ』の実験プロジェクトも担当していました。同時に両方のプロジェクトを取り扱うのはいくつかの大きな挑戦もやって来ましたが、キュービィのような新しいキャラクターと共にゲームを作れるのは今までに感じた幸せよりも大きなものでした。一度『TDX』の開発が終了すると、私は実験プロジェクトから公式開発プロジェクト*4に移行した『ハコボーイ』に専念することが出来ました。そこから本格的な開発が始まりました。『TDX』開発チームの数十名*5もプロジェクトに参加しました。

 先ほど言ったように、私たちの開発努力は主に『カービィ』シリーズに投入されるかされるかも知れませんが、その全てが『カービィ』シリーズに関連していなければならないという硬く、不変の規則は存在しません。私は『ハコボーイ』のようなカービィと関係しないプロジェクトとさらに頻繁に関わる機会を得ていますが、詳細についてはお答えできません。

6.ハコ生成のアイデアの起源

ステファン: 『ハコボーイ』のルールはシンプルなものですが、私はこれらの箱生成の仕組みを使ったゲームについては考えたことがありませんでした。このアイデアはどこから来たのか、それはどのようにして、ゲーム全体に十分になるよう実現していったのか、教えて下さい。

向江: 私はファミリーコンピュータとゲームボーイ時代のレトロゲームからヒントをとってゲームコンセプトを考えました。その時、シンプルなデザインを特徴とする多くのタイトルを見ました。例えば、クリアするために四角いブロックをステージの周りに押し込むなどです。ハル研究所がかつて出した作品、『エッガーランド』はそれらの1つに過ぎません。私はこの時代に見たゲームの「ステージコンプリートのためにブロックを動かす」というものを分析し、そこに自分のアイデアを持ち込み、誰も見たことのないゲームをもたらそうとしました。それが『ハコボーイ』というアイデアの誕生に繋がりました。

 私はこのアイデアが『ハコボーイ』独自のハコ作成スキルによってアンロックされる驚異的な量の種類の能力を見たときに、完全なゲームを構築するのに十分通用すると判断しました。ゲームの核には、ハコを作るという本当に単純なコンセプトがあります。しかしプレイヤーはそれをジャンプする際の土台に、登るための階段に、攻撃を"ブロック"するための壁に、高い場所に登るためのフックに、狭い場所を通るための「スネーク」に使えます。このアイデアを深く調べた時、できることがとても多く、このシンプルなアクションが幅広いタスクを可能にし、ゲーム全体を構築するのに十分であると理解しました。

7.グラフィックをモノクロにした理由 

ステファン: 最近モノクロのゲームを見るのは珍しいです。何故このゲームは白黒にしたのですか?

向江: 『ハコボーイ』のシンプルなグラフィックの狙いは他のゲームと区別するためでした。今はカラフルなヴィジュアルで彩られるゲームが数多くあり、『ハコボーイ』のようなシンプルな単色の外観を持つことで目立つようになります。これはお客さんの注目を集めてゲームに興味を持たせるために考えたものです。

8.ワールド5のステージ4

ステファン: 私はあなたがゲームのレベルを選んで、そのレベルのジャンプ、パズル、その他の障害にある意図を私に教えて貰えるかどうか不安でした。勿論向江氏がプレイヤーを常に、少しずつ訓練していると結論付けることもできますが、もし差し支えが無ければ、私と読者達に特定のレベルのデザインを通じてご教示頂ければ幸いです。

向江: では、5-4についてお話ししましょう。このステージは『ハコボーイ』が最初日本で発売された時、プレイヤーの間で大きな話題を生み出した場所です。実際にゲーム中のステージを見ながらだと、何故それほど話題となったのかが分かりやすいですし、さらに楽しめると思います。


BOXBOY! - 5-4 (記事中の参考動画とは違うものです)

このステージでは、ハコスネークの能力を使って素早く移動し、スイッチを押してシャッターを開きます。最初はスイッチを押してステージを進んでいくための基本的なハコスネークを使用していますが、ゴール直前の王冠を取得したい場合、ハコスネークで頭を働かせる必要があります。その時点まで、ステージを進めるのはかなりシンプルです。キュービィが行こうとする方向にブロックを作成するだけです。しかし、最後の王冠のために、ボックスを行こうとする壁の反対側に出す必要があります。このアプローチは日本のMiiverseのコミュニティでは「5-4の王冠がゲットできない!」というお題が人気だったように、多くの人にとって明らかに難しいものでした。このような経緯から5-4は私の思い出でも抜きんでたものとなっています。

 ところで、私がオススメするもう1つのステージは、スパイキーがデビューを果たすワールド14のステージ1です。『ハコボーイ』で現れる唯一の敵がスパイキーであるという事実にはある理由が存在します。このワールドの大半のステージは彼を案内するためにハコを使うプレイヤーが関係します。私がオススメしたいステージには他のステージでは見られない何かがあるからです。

 『ハコボーイ』のワールドの多くで見るものは、最初のステージで簡単なパズルを与え、プレイヤーに解決法を教えるというセットアップです。次に、徐々にパズルに慣れるのを助けるために最初のステージの解決法のバリエーションを提供し、最後にこれらの解決法を提示したパズルに適用するよう、プレイヤーに求めます。私たちの狙いは自然なステージ漸進でした。徐々にユーザーに単独でパズルの解決法を理解させようとしたのです。遊ぶときにはこのことを覚えておいて下さい。パズルを解く経験がさらに楽しくなると思います。

9.プレイヤーにどう感じてもらいたいか

ステファン: プレイヤーがこのゲームを遊ぶ時、向江氏はプレイヤーからどんな感覚を引き起こそうとしていますか? あなたは彼らを賢く感じることを望んでいると私には思われますが、実際はどうなのでしょう。

向江: 『ハコボーイ』はパズルゲームですので、ステージを作る時、難しいステージの解決に到達したときに「遂に解けた!自分は何て頭が良いんだ!」のような達成感を感じることを確実とするよう、注意を払いました。ゲームをデザインした時の私の願いは、プレイヤーが楽しさとステージ攻略の鍵を提供する、ユニークなハコ出し要素の背後にある深みを感じて貰うことです。

10.続編の計画

ステファン: DLCや続編の形でこのゲームのステージをさらに作るという計画はありますか?

向江: チャンスがあるならば、私はもっと多く作りたいです!それと、何よりも人々が『ハコボーイ』を手に入れてそれにハマることを望みます。もしあなた方がチャンスを与えてくれるのであれば光栄に存じます!

11.『マリオカート』と『スマブラ』、出演するならどっち?

ステファン: もしあなたが『マリオカート』か『大乱闘スマッシュブラザーズ』のどちらかにキュービィが出演するのを選べるならば、どちらを選びますか?そして理由は?

向江: 面白い質問ですね!そうですね…1つしか選択できないならば、私は『スマブラ』を選びます。理由としてはキュービィのハコ出しとそれによる多様なスキルが、攻守双方にたくさん応用できるからです!ステージから落下するのを防ぐために崖にハコを引っ掛けることが出来ればかなり楽しいかもしれません。

 ところで私が『マリオカート』を選ばなかった理由は、キュービィにハンドルを持たせる方法がないためです。もし出演するならば、彼はカーブの能力に何らかの問題を抱えているでしょう。ハコフックでホイールを掴むスキルがあるならば、『マリオカート』でも上手くやっていけるとも思いますが。…それで、「両方」と答えるのは貪欲でしょうか?

 

*1:発音の下りはカットしました。

*2:分かり辛い場合、「IP」で置き換えて下さい

*3:現状、『TDX』で向江氏と神山氏が同じチームで働いていたという証拠は見つかっていません。

*4:An official development projectの直訳です。これに該当すると思われる公式の日本語表現が見つかっていません

*5:プロデューサー、ゼネラルプロデューサー、エグゼクティブプロデューサーも含めて38名いましたので、ここでは数十名と表現しました。