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スタッフ分析:熊崎信也(1/12更新)

 これまで私は熊崎カービィの最たるもの、熊崎信也そのものについて記事にしてきました。それらをまとめるために、今回は熊崎信也の入社から『星のカービィ ロボボプラネット』までみっちりと分析した記事を用意しました。ちなみにこの記事を公開した時点で、「改めて考えるWii・TDX・ロボプラの特徴」「熊崎信也とは何者か」は非公開になります。ご了承下さい。

2017/1/12…『星のカービィWii』と「熊崎カービィ」の部分を加筆しました。

2016/8/9…8月7日に設定したフォーマットに従って、内容を一部変更しました。

2016/6/27…USDX開発後記全文と、『USDX』について追記しました。

2016/6/2…『タッチ!カービィ』について大幅に加筆しました。

2016/6/1…ヴァレリオンの謎の卵について加筆しました。

プロフィール

岐阜県出身。男性。血液型はA型。1998年、岐阜県立加納高校美術科卒業。2002年、金沢美術工芸大学視覚デザイン科卒業。 2002年、HAL研究所に入社。金沢美術工芸大学視覚デザイン科非常勤講師。

出典:熊崎信也 - カービィWiki - Wikia

 任天堂関連の企業の社員としてはかなりプロフィールがはっきりしています。これは彼が個人サイト([ K R ])を保有しているからです。インタビューにも出ており比較的有名です。

作風

 彼の作風は大きく分けて9つの要素を持っています。

  1. ボスを愛し、クライマックスを盛り上げる
  2. シナリオ作成のため、キャラそのものもプロデュース
  3. カービィらしいが、熱く、切ないストーリーとサウンドの連携
  4. プレイヤーの感情を予想したシナリオの作成
  5. 複雑なデザイン
  6. カービィとボス達が繰り広げる派手な演出
  7. あらゆる過去作を内包しようとする
  8. 過去作の要素の再構成と、それらを踏襲した創造
  9. ディレクター・リード中心

これらを1つずつ解説していきます。ちなみに、この部分は過去記事の『熊崎信也とは何者か』、『改めて考えるWii・TDX・ロボプラの特徴』の組み合わせとなっています。それらの記事を既に閲覧している場合、見る必要はありません。

1:ボスを愛し、クライマックスを盛り上げる

 熊崎信也のことを少しでも調べていると(アニヲタWiki(仮) - 熊崎信也)、彼が「ボスを愛するディレクター」ということははっきりとします。公式からのソースを出しますと

はい。久しぶりに吸い込みも、コピー能力も、
新しいコマンド技もたっぷりと楽しめる、
すごくパワーアップした王道カービィを存分に
楽しんでいただきたいと思っています。
オススメポイントですが、
わたしはボスをつくるのが大好きなのです。
とくにラスボス、クライマックスの盛り上がりは
「これでもかー!」という最高潮の展開を用意しています。

出典:社長が訊く『星のカービィ Wii』

となります。また、ハル研ブログで彼が書いた記事にも

 画面に色が付き、そこに新たな世界が誕生し、設計した仕掛けが動き、音楽が流れ出し、そして主人公が気持ちよく駆け抜ける...

そこへ立ちはだかる勇ましい強敵たち。
遊び手はこれまでの経験でこう動くだろう、こういう経験をし、こういう覚悟と感情で、この地に辿り着く。
ここまでの思い出を振り返る様に、この新曲を聴き、今書き上げたこのメッセージを読み、この一文に込めた、その裏に潜む切なさを感じながら、戦いに挑む。

であれば、遊び手のその感情に応えるように、強敵に相応しい多彩な攻撃で、主人公を一気に苦境に立たせる。

そこで新しい体験をした遊び手は、きっとまたこう動き出し、こう思うだろう。いや、絶対にそう思うはず!

...延々と、この長い「答え合わせ」が続きます。

出典:ゲームを作る仕事の喜び

と出ており、彼のボスに対する深い愛が感じられます。特にクライマックスを盛り上げるためにボスを活用しようとする姿勢が見えます。このことはシナリオ作成と関係する2、3、4にも繋がります。

2:シナリオ作成のため、キャラそのものもプロデュース

 カービィシリーズには、キャラクターの構築を担う職が存在します。キャラクタープロデュース、コーディネーションと表記ゆれが激しいですが意味合いはあまり変わりません。カービィの世界はボスキャラであっても喋ることは少ないため、こういった職が世界観の構築に大きく関わります。ではどのような作品に存在するのでしょうか?

以上の3作です。つまり熊崎が関わる作品にはこれが存在しません。そしてこれらを担当するのは熊崎信也本人だと言えます。

ここまでの思い出を振り返る様に、この新曲を聴き、今書き上げたこのメッセージを読み、この一文に込めた、その裏に潜む切なさを感じながら、戦いに挑む。

出典:ゲームを作る仕事の喜び

このメッセージというのはスペシャルメッセージのことを指します。筆者もそれをまとめた記事を投稿しています。

dougin-1809.hatenablog.jp

 カービィのシナリオはこの「メッセージ」が中核となり、考察する者は大体ここを起点にそれを始めていきます。シナリオを書く以上はキャラクターの性格や立ち位置も決めねばなりません。それらを握るのは熊崎信也本人、と筆者は結論付けました。

3:カービィらしいが、熱く、切ないシナリオとサウンドの連携

 『星のカービィWii』、『星のカービィ トリプルデラックス』、『星のカービィ ロボボプラネット』は音楽で高い評価を受けています。では、熊崎信也とサウンドスタッフの安藤浩和、石川淳はどのような関係を持っているのでしょうか。その答えの1つは『Wii』のサウンドセレクションに付属する小冊子にあります。

シリーズ最多曲数となる今作では、その曲の数だけサウンドスタッフとの長い二人三脚がありました。

その中で聴いた瞬間、一発OKだった曲が「エッガーエンジンズ」と「デンジャラスディナー」。

どちらも感情を一気に佳境へと誘う、熱い曲です。

開発中はスタッフの作った曲をループで1日中聴き続けました。とにかく聴いて聴いて、まず自分がその曲のファンになれるか確かめます。いまだに何回聞いても心動かされる曲が、最終ボスの2曲。

序盤はバトル色を前面に出しつつ、最終決戦では、壮大な中に切なさを含む、複雑なニュアンスも込められました。

出典:KIRBY Wii MUSIC SELECTION 付属ブックレット

ファンになれるかどうかは勿論重要ですが、ここで要素その2とその4で出た『ゲームをする仕事の喜び』のこの記述を思い出しましょう。

ここまでの思い出を振り返る様に、この新曲を聴き、今書き上げたこのメッセージを読み、この一文に込めた、その裏に潜む切なさを感じながら、戦いに挑む。

出典:ゲームを作る仕事の喜び

 ボスに対する深い愛とそれに伴うシナリオでのキャラ付けに、音楽が組み合わさるのです。よく熊崎カービィはラスボス戦が意味で熱いことで有名ですが、これは彼がボスと演出、音楽、そしてスペシャルメッセージの4つを融合させようと努力しているからです。その重要パーツの1つである音楽に熊崎は積極的に介入していると言えます。

 ちなみに、先ほどあげたブックレットと、熊崎が書いた記事には対象となる作品が違う(前者は『Wii』、後者は『TDX』と推測できます)にも関わらず、「切なさ」という言葉がどちらにも使われています。この切なさは『Wii』のマホロアの場合はあまり当てはまりませんが、『TDX』と『ロボプラ』のラスボスは悲劇的な結末を迎えることが鮮明になります。単純なストーリーではないためその点を評価する者もいれば、「後味の悪い話」で気持よく終われないとして批判する者もいます。*1

 ただし、そのような「切ない」部分が出るのは物語の終盤、もっと言えば隠しモードでようやく分かることで、それまではカービィらしい明快で単純なストーリーが繰り広げられます。特にオープニングムービーで一体何が起きたのか、何をすればいいのかがはっきりと分かるのが大きな特徴です。最初にラスボスを倒す時も「悲しく」なるよりは「熱く」なります。そういったクライマックスがあるからこそ、後に真実を知ることで「後味の悪い話」となってしまう場合もあるのですが。

4:プレイヤーの感情を予想したシナリオの作成

熊崎がどのようにゲームを編み出しているのか、1つの証拠となる文章が存在します。

遊び手はこれまでの経験でこう動くだろう、こういう経験をし、こういう覚悟と感情で、この地に辿り着く。?

 プレイヤーがどのように遊び、どのような感情を持つかを想定しながら彼はゲームを作っています。このような手法はゲームシステムの構築よりは、シナリオのそれに似ています。

 カービィシリーズの代表的なディレクターである2名と比較すると、『星のカービィ 夢の泉の物語』でステージ選択とコピー能力を実装させ、『星のカービィ スーパーデラックス』でオムニバス形式を、『カービィのエアライド』でブレーキとチャージを一体化させたシステムを構築した桜井や、『星のカービィ』からマップデザイナーに関わり、『星のカービィ3』で暖かみのあるデザインや『星のカービィ64』で2.5Dを導入した下村とは違ったアプローチであると言えます。

 熊崎は『Wii』や『TDX』でスーパー能力、ビッグバンを投入しましたが、これはシステムそのものに大きく切り込むものではなく、良くも悪くも一発屋に近いです。『ロボプラ』ではロボボや円形のボスステージが生まれましたが、これはそれぞれ『星のカービィ2』や『3』のなかま、『64』のボスステージ(特にピクス戦)をベースにしたもので、「新規」ではありません。

 ゲームシステムの大きな改変や独特のデザインではなく、プレイヤーの感情を予想したレベルデザインやシナリオを作るのが彼の持ち味と言えるでしょう。

5:複雑なキャラクターデザイン、独特な背景デザイン

 彼はデザイナー出身であり、今までに数多くの作品を描いています。一部は彼の個人サイトにも公開されています(KR Gallery)。

 このデザインの繊細さや複雑さがマホロアソウルやセクトニア、星の夢に反映されていると言うのはそこまでおかしくないと思います。ラスボスに限らなくとも、マホロアやタランザといった新キャラもカービィシリーズの他のキャラ、例えばリック、カイン、クーと同じ紙の中で描けば複雑さが際立ちます。『Wii』以降のザコキャラが以前のシリーズを踏襲したかのような、単純なデザインである事実を踏まえると尚更です。

6:カービィとボス達が繰り広げる派手な演出

  『Wii』、『TDX』、『ロボプラ』にはそれぞれスーパー能力、ビッグバン、ロボボアーマーが特殊能力として登場しました。これらが地形や敵をダイナミックに粉砕する姿は強烈なインパクトを与えます。TDX』まではそれらを「前提にした」ステージ設計が行われていました。前提ということはプレイヤーは必ずそれを利用しなければならないため、スーパー能力やビッグバンというド派手な力を手に入れても「やらされている」という気持ちをプレイヤーに植え付けることになってしまいました。要は作業になってしまうのです。毎度毎度かかる専用BGMも、そういった作業感を助長しているとは言えなくもないです。

 『ロボプラ』では、スーパー能力やビッグバンを派手にするためにスケールアップしたステージ設計をやめ、通常ステージとあまり変わらないようになりました。搭乗時もほとんどの場合はBGMが変わらなくなりました。インパクトは薄れますが、ロボボに乗った際の機動力が高いことも作用し作業感が減りました。

 このような派手な演出はカービィ側に留まりません。ボス側も多種多様な攻撃、派手なエフェクトを展開します。例えば『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』で初登場したギャラクティックナイトは『Wii』でトゥエルブエナジーシャワーを、『ロボプラ』で時界大斬閃といった新技を見せ、既存の技であるライジングスパインもロボプラで時限式のものが追加されたりと変更が施されています。

 また、ボスがHPを低下すると新形態となり、新たな攻撃パターンに移行するのも熊崎カービィの特徴です。*2ただ、形態移行をするということは、行動できない時間が生じることに繋がります。結果として高速でボスを倒すことが封じられてしまうためテンポが悪くなるとして批判されることもあります。

7:あらゆる過去作を内包しようとする

 彼は様々な過去作の要素を取り込むように努力しています。ロボプラのステッカーでは、トーセに権利があるのか持ち込みが難しいブロックボールを除けばあらゆる過去作の代表的なキャラを持ってきています。ちなみに彼は、個人サイトに遊んだゲーム作品を書き記していますが、その内カービィシリーズは

  • 星のカービィ 夢の泉の物語
  • カービィのピンボール
  • 星のカービィ
  • カービィのきらきらきっず
  • 星のカービィ2
  • カービィのブロックボール
  • カービィのきらきらきっず GB
  • 星のカービィ スーパーデラックス
  • 星のカービィ3
  • カービィボウル
  • 星のカービィ 夢の泉デラックス
  • 星のカービィ 鏡の大迷宮
  • 星のカービィ64
  • カービィのエアライド
  • タッチ!カービィ
  • 星のカービィ参上!ドロッチェ団
  • 星のカービィ ウルトラスーパーデラックス
  • 毛糸のカービィ
  • 3Dクラシックス 星のカービィ 夢の泉の物語
  • 星のカービィ 20周年スペシャルコレクション
  • 星のカービィ トリプルデラックス
  • カービィファイターズZ
  • デデデ大王のデデデでデンZ
  • タッチ!カービィ スーパーレインボー
  • 星のカービィ ロボボプラネット

(表記ゆれ、順番違いは仕様)

25作品がリストインしています。あれだけの要素を入れられるのも彼が作品を遊び、カービィシリーズの造詣が深いからでしょう。このファンサービスについては、あつカビやタチカビSRに見られるそれと比較した上で下の記事で解説しています。

dougin-1809.hatenablog.jp

8:過去作の要素の再構成と、それらを踏襲した創造

今までに『Wii』・『TDX』・『ロボプラ』で大なり小なり関わった過去作の要素は

  • スターロッド
  • ギャラクティック・ノヴァ
  • ディメンションミラー
  • 戦艦ハルバード

と複数あります。これらのアイテムの扱いが満場一致で受け入れられたかと言えばそうではありません。そもそもな話、ある意味神器と化した要素に新たな解釈を付け加えることはかなりのリスクとなります。その大胆な扱い方がファンの間で議論を呼ぶのもおかしくありません。

 また、『USDX』の時点で「メタナイトでゴーDX」でギャラクティックナイトという新キャラをギャラクティック・ノヴァを通じて生み出し、更に「真格闘王への道」ではマルクをノヴァの残骸と融合させることでマルクソウルを誕生させています。再構成だけでなく、過去作の要素を熊崎なりに解釈した創造も行っているのです。

 これはキャラクターだけでなく、ゲームシステムにも適用されます。熊崎カービィは毎度毎度独自のシステムを用意したりはせず、コマンド技を持つコピー能力、つまりSDX系列のシステムを常に採用しています。細かな変更は行われていますがシステムの根っこそのものを変えることはしていません(スーパー能力やビッグバンといった新要素は存在しますが)。このようなやり方は、古くから続く問題を呼び起こしてもおり、コマンド技を持つコピー能力の場合はプレイヤーにとって「コピー能力の技の把握」が負担となり得ます。

9:ディレクター・リード中心

彼の関わる作品は妙にディレクター・リード職が多いです。例えばほとんど同時期に生まれ、開発の母体が異なる『あつめて!カービィ』と『Wii』を比較しましょう。

  • 『あつカビ』

ディレクター、アシスタントディレクター、プランニングリーダー、プログラミングリーダー、デザインリーダー。合計5個

  • 『Wii』

ディレクター、アシスタントディレクター、リードアクションプログラム、デザインディレクター、リードキャラクターデザイン、リードモチーフデザイン、サブゲームディレクター、マネージングディレクター。合計8個

結論を言うと、『Wii』の方が3つ多いです。しかしこれを鵜呑みにするのは宜しくないです。『あつカビ』は先行作品が存在するDSで登場しましたが、『Wii』は文字通り1からの作成でした。ではその『Wii』で培われたノウハウを元にできた(悪く言うと流用)作品、つまり『TDX』と『ロボプラ』を、初のWiiU作品となった『タチカビSR』で再度比較しましょう。

  • 『タチカビSR』

ディレクション、プログラムディレクション、リードプログラム、アートディレクション、リードキャラクターデザイン、リードモチーフデザイン、リードミュージックコンポジション。合計7個

  • 『TDX』

ディレクター、リードレベルデザイン、アシスタントディレクター、プログラムディレクター、リードプログラム、リードアクションプログラム、デザインディレクター、リードデザイン、マネージングディレクター。合計9個

  • 『ロボプラ』

ゼネラルディレクター、シーケンスディレクター、レベルデザインディレクター、セクションディレクター、プログラムディレクター、リードアクションプログラム、リードプログラム、デザインディレクター、リードデザイン、リードモチーフデザイン、リードUIデザイン、リードサウンド、マネージングディレクター。合計13個

『TDX』の時点で『タチカビSR』よりも多く、しかも『ロボプラ』は13個と過去最高をマークしています。リードサウンドは単に役割をはっきりさせただけとも言えますがそれでもこの差は特筆に値します。これが何を意味するかははっきりと言えませんが、このディレクター・リード中心主義と呼べるスタイルは彼の作風の重要な特徴であると言えます。

 一応その理由について分かりそう材料はあります。彼は社長が訊く『星のカービィWii』で岩田のこのような質問

レベルデザイナーって何人ぐらいですか?

に対し

何名かでサポートしましたが、
ほとんどのマップをつくったのは1名です。
ひとりなのでノウハウも集中的にたまっていきますし、
そばで見ながら相談していくと、
あがってきたものを監修するよりも
時間的に倍ぐらいの手ごたえがありました。

(出典:社長が訊く『星のカービィ Wii』)

と回答している。確かに1人に作らせたほうが岩田の

フィードバックの回数が段違いですからね。

指摘通り、フィードバックを数多くこなせ効率よくマップの追加・改善を行えます。彼のこのようなやり方が他の分野にも波及した、と仮定すると「ゼネラルディレクターへの昇格(?)で多くの役職にディレクターとリードを付け、集中的な開発を行えるような環境を整備した」と考察することも可能です。同時に、自分の意見の発信力が拡大したことを受け、シーケンスディレクターやセクションディレクターといった"小"ディレクターを用意して自他の負担を和らげるとともに、効率性も維持したと見ることもできます。

まとめ

 一言で強引に言えば「ボスを愛し、ラスボスは特にシナリオや音楽と連動させることによって壮大で、かつ切ないクライマックスを作り上げ、過去作の要素をストーリーとリンクさせながら、豊富なカービィシリーズの知識を持って濃密なファンサービスを展開する作風」となります。

経歴

 入社から、デザイナーとして関わったエアライド、タチカビ、ディレクターとして関わったUSDX、Wii、スペコレ、TDX、ロボプラの8つの項目に分けて彼について解説していきます。

入社

 HAL研は新入社員がブログに記事を書くことがあります。幸運なことに彼は記事にした内の1人であり、さらに素晴らしいことにその記事をウェブアーカイブに保存してくれた方がいました*3

怒濤のような新人研修、グループワークも無事、幕を閉じました。

?

全25営業日というなんとも密度の濃い日程の中、さらに今年は、新人のCGデザイナーが自分1人ということもあり、それはもう目まぐるしいグループワークでした。

?

今回のグループワークのゲーム製作での自分の担当箇所は以下の通りです。
3Dモデリングに始まり、テクスチャ、アニメ?ション、マップ、インフォ、タイトルにエフェクトと・・・って、全部じゃん!

出典:新人研修2002 vol.2

グループワークというのは基本、新人だけで行うゲーム開発のことを指します。また、それとは関係ありませんが、この時キャラのボイスアクターも担当しています。

今回はキャラクタ?のボイスアクターなんて貴重な経験もさせて頂けるなど、楽しい経験も数多くありました。


キャラクタ?のボイスは是非ともまたやりたいですね?。

 彼がデデデ大王の声をやるようになったのは、この時の経験があったからかも知れません。

デザイナーとして

 入社してから彼はすぐにデザイナーとして働くようになりました。彼がデザイナーとしてスタッフリストに載っているのは『カービィのエアライド』と『タッチ!カービィ』の2作品です。これらにおける彼の活動を分析していきます。

カービィのエアライド(GC、2003年)

 彼が『エアライド』で主に何をしたか、答えは意外なところにありました。『カービィファイターズZ』と『デデデ大王のデデデでデンZ』のmiiverseのスタッフルームです。そこで熊崎はこのようなことを言っています。

ちなみにお気に入りのコースは…当時、デザインを担当させていただいた思い入れもありますが、明け方の渓谷「ヴァレリオン」でしょうか。

出典:Miiverse - イシダ's post | Nintendo

『星のカービィプププ大全―20th Anniversary』の124ページに、異彩を放つマシンやステージのラフスケッチがあり、そこには破れ目から瞳を覗かせる卵の絵がありますが、似たようなものが、彼が担当したヴァレリオンにも存在します。

f:id:dougin-1809:20160531201454p:plain

出典:ヴァレリオン - カービィWiki - Wikia

この謎の卵は後にタチカビのペイントパニックのお題にも登場しています。実はこの卵、熊崎が産みの親だと言える証拠が存在します。

星のカービィプププ大全―20th Anniversary (ワンダーライフスペシャル)

星のカービィプププ大全―20th Anniversary (ワンダーライフスペシャル)

?

2003年8月1日に彼がHAL研ダイアリー(当時)に投稿した記事に

そんな中、一番楽しんで作業出来たのは、コース作成!と言いたい所ですが、
やはり敵キャラクターやアイテムなどのデザイン作業でした。

今回のエアライドに登場する新キャラクターデザインのOKを頂くのに、
250体以上のボツキャラクター達が、葬られています。ぬぉ。
あんな可愛いアイツやこんな憎めないコイツも日の目を浴びる事無く・・・
そんな中、見事採用された愛しの敵キャラ達。
今頃、皆さんのゲーム画面内でプレイヤーを邪魔し、カービィに吸い込まれ、
吐き出されてるかと思うと・・・最高。

アイテムでも、ちょ?っとパチモンっぽい偽者アイテムが出現しますが、
間違って取っちゃった人の
「んなモン見分けられっか!」
「オモサじゃなくてカバンかよ!」
「タコさんウインナーかよ!」
と、さまぁ?ずバリのツッコミを聞く度に、ついついほくそ笑んでしまいます。にやり。

後は某ステージの巨大なタマゴ群の眼のまばたきに、思わず泣いちゃう子供達がいれば、
もう言う事ゴザイマセン。ギロリ、うぇ?ん。

出典:「カービィのエアライド」プロジェクトを終えて vol.4

と書かれているからです。わざわざ言及するということは自らが作者だと公言しているようなものでしょう。

 また、彼はエアライドでデデデ大王専用のマシン、ウィリーバイク・デデデカスタムのデザインを手がけたこともスタッフルームで発言しています。

「カービィのエアライド」に登場した大王専用マシン「ウィリーバイク・デデデカスタム」を思い出させるような名前ですね。
このマシンもかつて私がデザインしたものですが、今回スターロッドがデデデ用にカスタマイズされたように、あのウィリーバイクが、デデデ大王の衣装の模様を取り入れつつ、同じようにデデデ大王専用デザインとしてカスタマイズされたものでした。

出典:Miiverse - イシダ's post | Nintendo

熊崎信也はデデデ大王好きとしてファンの間では有名ですが、彼は入社一年目にして大王専用のマシンのデザインを手掛けていたことが出典記事の公開後、判明しました。

タッチ!カービィ(DS、2005年)

 タチカビで彼は最終ボス、エンドロール、ストーリー、ステージ名を担当したことが判明しています。

さて、今回のプロジェクトで私は主に、「最終ボス」「エンドロール」「ストーリー&ステージ名」を担当させて頂きました。僭越。

出典:『タッチ!カービィ』開発後記 vol.2

 外伝におけるカービィが何故ピンボールの球になるのか、何故ゴルフのボールとなるのか、何故パズルゲームをやるのか、何故コロコロ動くのかは今まではっきりとしてませんでした。これは『カービィのピンボール』からの伝統ですのでシリーズを続ける点で別に変える必要は無かったのですが、彼はここで大きく変化を加えました。タチカビのストーリーをカービィwikiから引用してみましょう。

ここは平和の楽園 プププランド
今日ものんきにさんぽ中のカービィ…
すると突然目の前の景色がゆがみだし
そこには怪しい魔女が!
魔女はあらゆる空間に絵を描き
あたり一面を絵画に変えていきます
カービィに気づいた魔女は
空に浮かぶふしぎな額縁へと逃げ込みました
カービィもあわてて後を追います
そこは絵画の世界でした
カービィは勇気を持って魔女に立ち向かいますが
怪しい魔法によってまるいボールの姿に!
飛び去る魔女をただボールの姿のまま見つめるだけのカービィ…
カービィがうつむくと魔女の落とした「ふしぎな絵筆」に気づきます。
カービィが虹色に輝く絵筆にふれるとまばゆい光とともにあなたの手元へ…

出典:?タッチ! カービィ - カービィWiki - Wikia

彼はストーリー中で何故カービィがボールになったのか、何故絵筆が登場するのかをはっきりと説明するようにしました。キーアイテムである魔法の絵筆をストーリーと絡ませたのは後の『TDX』のきせきの実や、『ロボプラ』のロボボアーマーからも分かります。*4

ストーリー大好きな私、これは楽しく作業させて頂きました。始めから企画の中で決められた要素も多く、「虹を描けるキーアイテム」の存在や「ボールになったカービィ」、それを味付けする為の「魔女」の存在をどう演出に上手く溶け込ませたものか、何案も考えました。

?

魔女の存在も、秘密ありげなバックグラウンドを感じさせるようにしたりと、こだわってみた部分ではありますが…ゲーム中ではあえて、多くを語らないようにしています。
※彼女の存在の秘密、明かされない詳細設定はかなり深く存在したりして。

出典:『タッチ!カービィ』開発後記 vol.2

 後半で語られるドロシアも、彼女の第二形態である「ドロシアソウル」は後のソウル系の始祖にもなりました。壮絶な彼女の最期は彼の強烈な作風と、今後のカービィシリーズの1つの道を示す道標になったと言っていいでしょう。また、最終ボスが絶対悪ではないのは彼の作風の1つです。

かつて、DS版のタッチ!カービィを開発した時も、派生シリーズならではの魅力が出る様に、当時シリーズでは珍しかった女性ラスボスに、
単純な悪ではなく、生い立ちにちょっと深い設定と物語性を取り入れるなど、それまでのシリーズであまり無かった要素を取り入れ、
以降の本編シリーズの表現の幅や選択肢を広げていく事に繋がったように思います。

出典:Miiverse - イシダ's post | Nintendo

そして、ステージ名においても後の作品に続く「頭文字を合わせるとキーワードが出る」という特徴を、彼は『夢の泉の物語』から掘り起こしたと思われます。

あと、ステージ名作成の方もかなりのボリュームがあり、コトバでの遊びや仕掛けを取り入れるのは楽しいですが、その物量での苦労も多かったです。
遊び心あるステージ名、皆さんに伝わりましたでしょうか?お気に入りの名称は「Dreamy Darkness」と、最終ボスの名前です。

出典:『タッチ!カービィ』開発後記 vol.2

ステージ名はカービィWikiより引用しました。

レベル1 - レッディランド (Reddy Land)
Reddy→Red = 赤

  • プレーンプラント (Plain Plant)
  • タイニータウン (Tiny Town)
  • ラビンロード (Ravine Road)

レベル2 - アロンジバレー (Aronge Valley)
Aronge→Orange = 橙

  • ゴーストグラウンド (Ghost Ground)
  • グロースグラス (Growth Grass)
  • マグマウント (Mag Mount)

レベル3 - イエラスアドベンチャー (Ieras Adventure)
Ieras→Yellow = 黄色

  • リフトルイン (Rift Ruin)
  • コントラストケーブ (Contrast Cave)
  • シルバーサブマリン (Silver Submarine)

レベル4 - ネオジェネオ (Neo Geneo)
Geneo→Green = 緑

  • マシンマンション (Machine Mansion)
  • ドリーミーダークネス (Dreamy Darkness)
  • パレットポリス (Palette Polis)

レベル5 - ブエルヒルズ (Buel Hills)
Buel→Blue = 青

  • コールドコース (Cold Course)
  • ダンジョンドーム (Dungeon Dome)
  • キャンバスキャニオン (Canvas Canyon)

レベル6 - オルトラムエリア (Oltram Area)
Oltram→Ultramarine = 藍色

  • コラプスキャッスル (Collapse Castle)
  • ヴァラトルボルケーノ (Volatile Volcano)
  • サイレントシーベッド (Silent Seabed)

レベル7 - ワンダーバイレット (Wonder Vilet)
Vilet→Violet = 紫

  • フローズンファンタジー (Frozen Fantasy)
  • マッドメカニズム (Mad Mechanism)
  • スペクタクルスペース (Spectacle Space)

レベル8 - ザ ワールド オブ ドロシア (The World of Drawcia)

出典:タッチ! カービィ - カービィWiki - Wikia

ステージレベルは頭文字が同一でない、それぞれのゲームステージに名称があり頭文字が同一になっているなど細かな違いはあり、以降の作品では夢の泉の物語のようにステージレベルの前後の頭文字を同じにしています。

? このように彼の作風はタチカビの時点で表に出ていました。しかもデザイナーの普通の仕事とはいえないものにも携わっていました。彼がディレクターとなり、後のカービィシリーズの牽引役となるのは時間の問題だったのかも知れません。

ディレクターとして

 『タチカビ』後、彼は『USDX』でディレクターを務めるようになりました。彼がディレクターとしてどのように活動したのか、熊崎自身の作風がどのように表れたかを追っていきましょう。

星のカービィ ウルトラスーパーデラックス(DS、2008年)※6/27 更新

 彼がディレクターとして作品に関わったのは『USDX』が初めてです。USDXは1996年に発売された『SDX』のリメイクに当たりますが、メインモードに大王の逆襲、ヘルパーマスターへの道、メタナイトでゴーDX、真格闘王への道が、サブゲームにタッチ! 刹那のカルタ取り、タッチ! 早撃ちカービィ、爆裂コンベアタッチ!が追加された作品となっています。

 リメイク作品ですが、新規追加されたモードのそれぞれのラスボスを担当するマスクド・デデデ、ワムバムジュエル、ギャラクティックナイト、マルクソウルは彼の好みと持ち味が発揮されている証拠でもあります。ただし、『SDX』の元々の雰囲気を維持するためか、『TDX』から出てくるようになった悲劇的なシナリオは存在しません。

 断末魔をあげて真っ二つになるマルクソウルはいますが、元々マルクはブラックホール発動時に自身の体を二等分するため、過去作の仕様を再構成した結果だと考えることもできます。尚、この時点では判明しなかったことですが、マスクド・デデデのマスクが実は『鏡の大迷宮』のラスボスである、ダークマインドの第一形態の仮面をデフォルメしたものだったことも加えていいでしょう。

ちなみにこのマスクのデザイン、実は「鏡の大迷宮」に登場した、「ダークマインド」が、その姿を隠すべく付けていたものを大幅にデフォルメしたものなのです。よ?く見ると少しだけ、共通した部分もありますよね。お気づきの方もいらしたかもしれませんね。

出典:Miiverse - イシダ's post | Nintendo

<6/27 追加分>

 また、開発後記が見つかったため、彼がUSDXの監修でどこに注目し、どこに苦労したのかが明らかになりました。リンクの都合上、ここでは全文を掲載します。

皆さんこんにちは。
『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』のディレクターの熊崎です。
発売から1週間が経ちましたが、皆さんはもう銀河をかける大冒険に出られたでしょうか?まだの方は是非、お店へGO!でお願いします。

?

さて、『ウルトラスーパーデラックス』。いや、もの凄いタイトルですね。
名前負けしてしまいそうな響きですが、チーム一同、待っていてくださる皆さんの期待に応えたい一心で
朝な夕なに制作に励み、無事完成させることが出来ました。パチパチ!

?

今作はスーパーファミコン版『星のカービィ スーパーデラックス』をベースに、
あちこちパワーアップしているのですが、企画初期を振り返れば、手元にあった
ゲーム資料というのが製品版ソフト1本のみ。この状況でどこから手を付けたら
良いものか悩みました。
『スーパーデラックス』自体がスーパーファミコンのゲームですし、もともと
大ボリュームだったこともあり、それを全部DSに詰め込むということだけでも、
いろいろと試行錯誤を重ねました。

?

通常、ゲーム制作では、スケジュールやゲーム機の制約などに合わせ、
当初考えていたものからやむを得ず仕様をカットすることもあります。
完成させるためにはボリューム調整を行うことも必要な行程なのです。
ですが、今作においては、旧作の『スーパーデラックス』にあった要素は
お客さんの期待値を考えても、全体のゲームバランスを考えても、
何一つカット出来ません。
要素を削がず、ここ最近のカービィシリーズとしても違和感が無いように
バランスを取ることはとても気を使う作業でした。

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そういった試行錯誤や改良を繰り返して完成した本作には、
苦労の分だけ、たくさんの見所やこだわりが、ぎっしり詰まっています。

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まず、デザインについてですが、カービィや敵キャラクターの
ドット絵のサイズは最近のシリーズより1.5倍ほど大きくしてあります。
細かい部分も描き直し、アニメーションの枚数も大幅に強化しました。
ただし、アニメーションが増えたことでアクションが重くならないよう、
動く所はより以前よりもキビキビ動くよう配慮しました。
じつは、歩行やダッシュ速度などは旧作よりも少しだけ早くしてあり、
特にゲームモード『激突!グルメレース』などで体感できると思います。
例えば旧作の『グルメレース』で、コース3のハイスコアで40秒台が
壁になっていたのが、30秒後半になっていたりと、ちょっぴりクイックな
操作になっています。

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ストーリーの演出のために作られた3Dムービーも、
このゲームをあらためて今の世に送り出すのに相応しいクオリティにしつつ、
ゲームを邪魔しないよう、スムーズな読み込みとテンポに配慮して作り ました。
演出によって、遊びの本質に影響が出てしまっては本末転倒になってしまうので、
特に読み込み時間は極力少なくなるよう気を使いました。

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それから、ゲームモードも旧作の6種類+隠し1つの計7種類だったものから、
全部で10種類以上と、遊びごたえある内容になっています。
旧作のモードはもちろん全部入っていますし、
ゲーム後半には新能力相当の技を操る、あの騎士のキャラクターを
操作できるモードがあったり、1人で遊ばれる方にも、ヘルパーの操作を
極めてもらえるモードがあったり等々…
それぞれ、クリアして行く事で遊べるようになる特別なものなのですが、
次々と遊べるゲームモードが増えていく所も本作の見所の一つかと思います。

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他には、初めての方が遊びやすいよう、コピー能力全般の調整を行いました。
小学生へのモニターテストも行いましたが、やはり完全再現の懐かしい操作ですと
かつてのファンには馴染みがあるものの、新しく遊ぶ人にとっては遊びづらい部分が
あるようで、自分自身もその結果には少し戸惑いつつ、慎重に調整しました。
もちろん上級者の方も満足出来るように、ファンに嬉しい要素や、テクニック必須の
大技などは残してあります。
全体的には、頑張れば誰でもクリアできるような難易度にしたつもりです。
遊んでくれた人の多くが、感動のエンディングを見られるように願って…。

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『最後に』
しかし、ここまで書いてきて改めて思いますけど、ボリューム満点ですよね。
ユーザーとして遊びたかったです(笑)。
前回の仕事『タッチ!カービィ』では、シナリオやラスボスなどを担当させて
頂いたのですが、これも当時、作り込めるだけ作り込もうと思い、トコトンまで
やったつもりでした。それでもやりきれなかった要素はあって…。
ですが今回は、さすがに思い残すことは…無いです!
いや、やっぱりまだあるかも(笑)。けど、それだけの達成感はあります。

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現在、ニンテンドーDSには手軽に誰もが遊べる、ライトなゲームが沢山あります。
そんな状況を見て自分なりに考えたことが、このタイミングでこそ
帰ってきたかつてのゲームユーザーと、新しく遊び始めた人の両方に
満足してもらえるものを作ることでした。「これぞゲームだ!」という、
遊びごたえのある内容にしたい、そういう気概を持って作り込みました。

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1人でも多くのお客さんに、エンディングまで遊んでいただければうれしいです。
めくるめく10種類以上のゲームモードに5種類のサブゲームを、存分に楽しんでください!

出典:『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』開発後記 vol.3(要半分弱スクロール)

 一覧表示を駆使することで記事の内容を復活させるというちょっとした荒業ですので、記事を発見できない人のためにも全文を掲載しました。

 ファンの信仰が強い『SDX』のリメイクというのは生半可の覚悟や技量では成し遂げることはできず、プログラミング担当の乙黒によれば「当時のプログラム言語を今の言語で作り直す」という地味だが膨大な作業も待ち構えており、新作のゲーム1本を作るプロジェクトとは別の観点での難問がありました。そういった課題を乗り越え

  • アニメーションは増やすが重くならないよう、キビキビとした速さにし
  • 3Dムービーはスムーズな読み込みとテンポに配慮
  • 初めての方にも遊べるようコピー能力の操作全般を調整し
  • 全体的には、誰でも頑張ればクリアできるような難易度にしたりと

『SDX』という古典を翻訳し、現代のプレイヤーにも遊びやすいようにアレンジを施しました。ただ、見てみると分かるように彼はこの時点で音楽には特に注目していません。『USDX』のオリジナルサウンドトラックにも熊崎のコメントは一切有りません。彼がそこに力を注ぐようになるのは『Wii』からでしょう。

<6/27 追加分終>

星のカービィ Wii(Wii、2011年)

 据え置き王道カービィとしては11年ぶりに登場した作品。スーパー能力を前提にしたステージ設計(社長が訊く『星のカービィ Wii』の後半辺りにそのような発言が存在する)、マホロアのスターロッドやギャラクティック・ノヴァを彷彿とさせる発言(カービィシリーズのファンサービスには2つある - ものおきの星のカービィ Wiiを参照)など彼の作風が悪い方向へ働いた点はありましたが、カービィの集大成と言える作品に仕上がったのは彼の功績でしょう。元々あった3つの作品を開発した人達のことを考えてか、こちらもシナリオはSDXの「銀河に願いを」に似た形で終わらせています。

 スーパー能力も、熊崎が提出した企画書には無かったためか、シナリオとの連携は希薄です。

スーパー能力に関しては、
わたしが提出した最初の企画書には入れていなかったのです。
じつはスーパー能力は、3作目の仕様にあったもので、
当時も考えうる限りの実験をすごくやっていて、
それでもまとまらなかったものになります。
最終的には実装しましたが、正直、それに手をつけるのは、
最初は恐かったです。

出典:社長が訊く『星のカービィ Wii』

<1/12 追加分その1>

 また、ここで彼はエクストラモードを用意し、リベンジしたボスやHR-D3、マホロアソウルを出してきましたが彼にとってはボスが大事であるためか、ステージ設計を変えることはありませんでした。この「隠しモードでボスを強くする」というスタイルが洗練された結果が『TDX』の「デデデでゴー!」「真格闘王への道」や『ロボプラ』の「メタナイトでゴー!リターンズ」「真勝ち抜きボスバトル」と、両作品に存在する「エクストラステージ」という前者は戦闘、後者はステージの専門化だと思います。

<1/12 追加分その1終>

星のカービィ 20周年スペシャルコレクション(Wii、2012年)

  20周年記念ソフトとして発売された作品。特典が山盛りなのに3880円という低価格で販売されたことも話題になりました。ここでも熊崎はディレクターとして開発に関わっていました。初代から20年経ったのを記念にしているのか、もっとチャレンジステージのエンディングのBGMは終盤がGB音源に変化したりと、ファンなら分かるサービスを展開しています。

 『20周年SP』のゲームのパッケージは「銅箱風」となっていますが、これは『USDX』に出来なかったことを熊崎がリベンジとして再度推し進めたようにも見えます。ソースはこちらから。

白川:スーパーデラックスの時のパッケージってご存知ですか?


熊崎:ええ、桐の箱に焼印を模した紙パッケージで。

白川:「豪華と言ったら桐箱じゃん」みたいな一声で決まったと聞いたんです。この箱って当時はだいぶユニークだったと思っているんですよ。だから、今回もパッケージに豪華さを出したいなと考えてました。

今回は桐箱の上にのし紙付きの特別豪華パッケージという案がずっと残ってました。しかも、のし紙に「特別豪華」って入っているんですよ


熊崎:そうそう、かなり豪華な感じになってましたよね。なので、私は桐箱案が一押しでした。


白川:紐までついてましたもんね。

でも「豪華=桐箱」というイメージが、子供たちにもピンとくるのか…ということで悩みました。
悩みに悩んで、いろんな意見を聞いて検討した結果、最終的にキラキラのコートをかけた現在パッケージになりました。

出典:N.O.M 2008年11月号 No.124:星のカービィ ウルトラスーパーデラックス 開発スタッフインタビュー

 任天堂の白川によれば、USDXは「星のカービィ15周年記念」として生まれたものであるとのこと。恐らく企画当初のコンセプトである「ファンサービス」をとるか、「新規への配慮」をとるかで揺れ、最終的に後者が取られたのでしょう。しかし、今回はファンの、ファンによる、ファンのためのソフトです。熊崎がこのチャンスを逃す訳がなく、銅箱案を強力に推進したであろうことは想像に難くないと思います。

星のカービィ トリプルデラックス(3DS、2014年)

 リメイク作品の『USDX』、没作品をブラッシュアップさせた作品の『Wii』、記念作品の『20周年SP』と、彼が『TDX』までに関わってきた作品は一から彼が築き上げたものではありません。そのため、この作品から上に挙げた彼の作風がはっきりと示されるようになりました。

 結果的に、ビッグバンを前提にしたステージや、過去作の要素であるディメンションミラーを本作のラスボスのセクトニアとリンクさせたり、手強いを通り越して倒すのが面倒なボス、最後のエクストラステージのファンサービスやキーホルダーなど彼の特徴が前面に出た作品となっています。

 毎度毎度ゲームシステムやデザインを変えるカービィシリーズとしては異例ですが、ゲームエンジンがWiiの流用となっています。これも彼の作風を発揮する点では流用でも問題ないからでしょう。

 また、本作で熊崎はデデデ大王を本格的にストーリーに絡ませました。マスクド・デデデ戦のアレンジである音楽の名は熊崎が付けた(正確にはゲーム中の全てのBGM名は彼が名付けの親)。その名も「王位の復権:D.D.D」。近作で不甲斐ない場面の多かったデデデが強力な敵として蘇った象徴的な作品でもあります。

カービィファイターズZ、デデデ大王のデデデでデンZ(3DS、2014年)

 『TDX』のサブゲームをさらに発展させた作品。デデデ大王好きの側面が暴発したのか、後者はまさかのデデデ大王が主役の作品となりました。『カービィシリーズ』では異例のことです。『カビファZ』でもラスボスがデデデ大王であり、めちゃむずの時のみ「ヒストリーオブデデデ」という集大成に相応しい曲が流れるのも暴発なのかも知れません。 こちらではデデデ大王がカービィのライバルとして意地を見せた作品となっています。どちらもストーリーはほとんど無く、ファンサービスを凝縮した作品に仕上がっています。

星のカービィ ロボボプラネット(3DS、2016年)

 今回、熊崎はゼネラルディレクターとなり、作風の9で紹介したように大量のディレクター・リードを配置して作品が生まれました。ゲームエンジンを『20周年SP』も合わせれば4回も使い回すという『カービィシリーズ』としては大胆なことが行われましたが、ゲームのクオリティはWiiやTDXからさらに洗練されました。

 例えばラストのQTEが『Wii』ではウルトラソードでは要求されなかった、「リモコンを降る」、『TDX』ではこれまたビッグバンすいこみでは必要としなかった「十字ガチャガチャ」だったのが、本作では今までにやってきた既知の動作を行うように改善されました。

 ロボボの機動力によりテンポも良くなり、『TDX』のように奥と手前の移動を悪用したことで、カービィが何もできない時間が多かったボスも減りました。痒いところに手が届かなかったキーホルダーも『ロボプラ』のステッカーでは、ブロックボール以外はカバーされました。

 そして、熊崎のサウンドと連携した切ないシナリオは健在であり、その展開もいきなり出てきたディメンションミラーや、どこから来たのか、誰が用意したのかはっきりとしないセクトニアに与えられた4つのきせきの実など不備な点が多かったTDXと比べると大きく改善されています。

 序盤のオープニングムービーの「宇宙からのファーストコンタクト」もわずか1分37秒の間に、何が起きたのか、我々はどうすればいいのか、そして今作の冒険する舞台はどうなっているのかがはっきりと分かるようになっています。

 『Wii』や『TDX』のゲーム性・ファンサービスとしての不満点を大きく改善させたのは彼がディレクターとして成長している証でもあるでしょう。

「熊崎カービィ」

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出典:ゲームを作る仕事の喜び?

? 『タチカビ』の時点で、彼の明快で切ないストーリー、壮絶な最後を遂げるボスという彼の作風の鱗片は見えていました。しかし、そういった面が前面に出てファンからの注目を集めるようになるのは『TDX』以降でした。『ロボプラ』になって漸く分かったことですが、熊崎信也は「過去作の要素を利用したキャラやシステムを構築し、ボスを活用してクライマックスを盛り上げ、サウンドを連携させた熱くも切ないプレイヤーの感情を予想したシナリオを用意し、随所にファンなら分かる要素も入れつつ誰でも楽しめるような」カービィを編み出しているのです。それが熊崎カービィの定義なのではないかと筆者は考えています。

<1/12 追加分その2>

 特に『Wii』、『TDX』、『ロボプラ』は最適化を繰り返しており、例えば『Wii』のエクストラモードは携帯機で遊ぶ『TDX』『ロボプラ』では、違ったキャラクターを用いたタイムアタック方式のモードと、本編での「エクストラステージ」の2つに分けて用意されています。ただし、この最適化と彼のスタイルが衝突した結果として「真・格闘王への道」「真・勝ち抜きボスバトル」の戦った経験の少ないボスの急増による難易度上昇も発生しています。例えば『Wii』の場合該当するボスは

  • ギャラクティックナイト
  • マホロアソウル(パターン変化の2戦)

の2体(パターン変化を含むと3体)のみですが、『TDX』では

  • ダークメタナイト
  • ブラックデデデ
  • セクトニアソウル(パターン変化の1戦、新形態の1戦)

と3体(パターン変化を含むと4体)に、『ロボプラ』では

  • クローンダークマター
  • クローンセクトニア
  • ギャラクティックナイトリターンズ
  • 星の夢(パターン変化の3戦、新形態の2戦)

となり、4体、パターン変化と新形態をそれぞれ1体とすると8体にもなります。戦った経験が少ないというのは単に本編で戦えないというだけでなく、別キャラによる操作の変更も理由の1つなため、カービィとは違うキャラで操作するモードに隠しボスを投入した弊害でもあります。仮にこの方針が続く場合、難易度の慢性的な上昇は避けられないと思います。

<1/12 追加分その2終>

 勿論、これはロボプラ時点の話なので以降、彼が中心となって出たカービィが大きな変化を遂げていれば話は変わってきます。あくまでも現時点での分析結果に過ぎません。

? また、熊崎カービィだけがカービィの表し方ではないように、並行して『あつめて! カービィ』や『タッチ! カービィ スーパーレインボー』といった作品も生まれています。これらの作品に対する注目も忘れてはいけないと筆者は考えます。

*1:余談ですが、『TDX』は後味の悪い話としてこちらのまとめサイトに載っています。星のカービィ トリプルデラックス | 後味の悪い話まとめサイト@2chオカルト板

*2:64以外ではHP低下で攻撃自体は激しくなっても、新形態に移行することはありません

*3:筆者はこのアーカイブ化の作業に加わっていません。名もなき方々の努力によりこの記事は成り立っているのです。

*4:余談ですが以降の外伝作品もこのように、『あつカビ』の勇者の心、『タチカビSR』のエリーヌといったキーアイテム・キャラクターがシナリオと連携するようになります。